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執筆者の写真地引 由美 Yumi JIBIKI

『濃厚』が避けられた後は

 「濃厚」とPCに打ち込めば「濃厚接触者」が候補に上がって来て「濃い」とか「強烈」などという雰囲気もなんとなく避けて過ごしてきた今年も、二十四節気の「寒露(かんろ)」を前に朝晩は思わぬ寒さを感じる様になりました。「草木に冷たい露が降りる頃」という通り、朝早い庭の芝生には細かい水滴がキラキラしていて、サンダルで出た足をしっとりと濡らします。

 『プリンセス ドゥ モナコ』の花びらの上にも、ドレスに煌めくスワロフスキーの様な細かな水滴が見られます。

 下の画像は、5月の『プリンセス ドゥ モナコ』。生き生きとしていて、『青春』という感じ。秋バラの季節の今は『白秋』という言葉の様に、花びらの色が春よりも白々と冴え冴えとしているように見て取れます。


 ラズベリーも実りました。

 秋になると茎は硬くなり葉もかさついていますが、実の色も味も濃くなっています。  でも春のラズベリーも美味しかった。この世にデビューすることを喜んでいるように、花も果実も最初に開花したり実ったりするものが一番立派だったことを思い出します。


 どちらが好みかと問われれば、どちらもステキ。  が、人々の味の好みは「濃厚」から「淡白」へと向かっているのかしらと思う記事が朝日新聞に掲載されていました。山梨県のブドウの出荷量で、長年1位だった「巨峰(31%)」を今年初めて「シャインマスカット(38%)」が上回ったそうです。服に付くと取れない濃い暗紫色の、口に入れると渋みのある果皮の巨峰は、贅沢なイメージがあります。皮ごと食べられて甘いシャインマスカットはぐっと軽やかな感じ。  『濃厚』より『軽やか』が好まれるのは、香水の人気の傾向にも共通しています。  先日、エスティーローダー社がアラミス&デザイナーズフレグランス部門の事業を2023年までに終了するというニュースがあったり。デザイナーズブランドや、セレブリティのフレグランスにも良いものはたくさんあるのですが。

 それでも、シャインマスカットがその人気を受けて、すでに赤い「シャインローズ」や、黒い大粒の実の「富士の輝き」というブラックシャインマスカットが誕生している様に、ファッションフレグランスのテイストを持つラグジュアリーフレグランスやニッチフレグランスが出てくるのでしょうかしら。BRITNEY SPEARSのファーストフレグランス『curious』の魅力なんて、某ラグジュアリーブランドが上手に取り入れていますし。

 そんなことを思う秋の1日。


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