もう10年以上親しくさせて頂いている山本 亜紀子 様 にお誘い頂き、セントマティック株式会社様をご訪問させていただきました。先日、新宿ルミネの KO-GU を訪れた時のブログで体験した KAORIUM(カオリウム)を開発された会社です。
2019年の晩秋、フランスから帰ってきた後に「セントマティック誕生!香りの体験から社会を変えていく」という趣旨のリリースを見たことは記憶に残っていました。あれから3年経って『香り×UX(ユーザー体験)× IT』を具現化した KAORIUM の今は、香水を購入したい消費者にとって
・楽しく無理なく好きな香りを見つけられる
・他者を介在させずに自分だけで好きな香りを見つけられる
・AI の診断に基づく「パーソナライズ」された結果がすぐにわかる
というアドバンテージがあります。
「楽しく無理なく」は今の時代に何かを体験する時には欠かせない要件ですし、「他者を介在させず」はコロナ禍中において人と人の接触はなるべく避けなければいけないという状況をも逆に味方につけました。そして AI での『パーソナライズ』提案は、突飛なのは嫌だけれど他者と違う自分であることを望み、 amazon のおすすめや、リスティング広告等で AI からの購入提案が当たり前であるZ世代にとっては普通のこと。
素敵な笑顔でお迎えくださったセントマティック株式会社 代表取締役社長 栗栖俊治氏。お話をお伺いする中で私が誤解していたとわかることがありました。テレビ等で見た方も多いのではないでしょうか、「お酒の味わいを『言葉』で表す日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」。この日本酒のおすすめの AI がさらに改良されて香水に向かったと思っていたのですが、最初から目指していたのフレグランスの世界だったのですね。
それからKAORIUM を操作する中で表示される言葉の文字の大きさ。大きいほど強く訴求したいものなのかと思いましたが、そうではなく同じ大きさで並んでいるとかえって視認性が悪くなるからとのことでした。
6月29日~7月1日にマイアミで開催された WPC(The World Perfumery Congres)に出展された際のお話をお伺いしました。会場のコンベンションセンターに来場されるのは世界の香料会社の方々や調香師などのフレグランス業界の関係者なのですが、そこで KAORIUM を体験してもらった結果は
・満足度 、9.4(10点満点中)
・英語表現に対する満足度 8.4(10点満点中)
共に素晴らしい高評価であり、さらに
・NPS(=ネット・プロモーター・スコア)の結果は75、これはアップルやamazonとほぼ同水準だそうです。
このサービス・体験に満足してそれを誰かに勧めたいと思う感想を持った方がいかに多いかという証明ですね。実際に会場では、一度体験した人が別の人を連れて来るということが頻繁にあったそうです。しかもそれが香水業界の関係者の集まる場での結果だということが素晴らしい。
AI については、香水を創作する立場のパフューマーはどう思っているかというと、昨年のジャン=クロード・エレナとジャック=キャバリエ・ベルトリュの対談で二人は
キャバリエ「多くのパトロンが、僕たちみたいな好奇心旺盛な野獣を(笑)、AIに置き換えたいだろうね(笑)」
エレナ「ああ、本当にそうだと思うよ(笑)僕たち二人ともは全くそうは思っていないけど。」
キャバリエ「僕は君の様には思っていないけど…まぁ、人々は混同しているよね、アルゴリズムで全てが早く素晴らしくなると…もうすでに僕たちは全てアルゴリズムで管理されている、普通のやり方として…でも創作の分野においてはまだ(AI に取り込まれない)希望はある。」(抄訳からの抜粋)
購入する側の消費者はどうでしょう。香水選びは本来自分が好きな香りを選べば良いだけですが、自分が好きな香りがわからない、という方も多くいらっしゃいます。好きな香りに自分だけで辿り着けない時、誰の手を借りるか。その手は多い方が良いですから、まずAIの結果を見てみる、というのは良いと思います。ギフトの購入であればそのまま AI の結果に従うのは良いでしょう。けれど人は往々にして迷いたがる生き物で(笑)、嗜好品としての性格が強い香水の場合はなおさら。迷った結果に手に入れたものは、迷わずに手にれたものより思い入れが強くなったりもします。AIが導き出した香りに少し迷いたい。そんな時に背中を押してくれるアドバイスは人間同士の方が良いでしょう。
この日は、NOSE SHOP用の KAORIUM を体験させて頂きました。結果として導き出されたのは、まだ暑いけれど、去りゆく夏を感じさせる今にジャストな香り。これはNOSE SHOP にチェックしに行かなくては!
KAORIUM が、様々な店舗に広まってきた今、より身近になってきました。とはいえ、香水好きな方の中には AI に自分の感性を勝手に判断されるのは嫌(笑)という方々もいらっしゃいます。その様な方のために上級者用の KAORIUM をすでに開発済みだそうで、ローンチがとても楽しみです。
香料とノート、調香師から目当ての香水を探すことができるサイトは既に存在していますが、もっと簡単に、イメージする言葉から香水を探す、そんなことが KAORIUM でできる日も、もう間も無くかもしれません。これからが益々楽しみです。
『香り探しは自分探し』という面も大きいのです。香りを嗅ぎながら言葉に置き換えて明確にしていくことで、自分でも気づかなかった自分に出会えるかもしれません。KAORIUM の評価がこれからますます海外で高まる前に、日本で私たちは体験し尽くしておきましょう。
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